バレエ音楽研究ノート

音楽家の立場からバレエ音楽を考察してまいります。【稲垣宏樹】指揮者・作曲家/日本指揮者協会会員/2015年度愛知県芸術文化選奨文化賞受賞【個人】/第58・62回文化庁芸術祭優秀賞受賞【団体】/第25・27回名古屋市民芸術祭芸術祭賞受賞【団体】

楽譜への疑問⑧ープロコフィエフ:バレエ《ロメオとジュリエット》ーNo.26 ; Vc. の誤植?corA 改訂。

■No.26 Nurse:

【Vc.誤植?】練習番号200番1~2小節目:練習番号200番1~2小節目の4拍目の和音は Dm ではないでしょうか?オーケストレーションの常識からして Vc. のパートは不可解であり、特に練習番号200番2小節目のバスに相当する Vc. の H の音は不可解です(H の音がバスとなることで和音は Bm7-5 となります)。参考にピアノスコアを見ると和音は Dm でした。恐らく Vc. は BCl. と同じ D であると思われ、私は改訂をすることにいたしましたが、マニュスクリプトを見なければ本当のところは不明です。

 

【corA 改訂】練習番号200番4小節目:原曲の 6本の Hr. を 4本に縮小したことによる改訂。原曲は 5本の Hr. で 5声の和音を作っている。5声目の 5th Hr. のパートをどのようにするのかが問題となります。Hr.との音色のブレンドで最も望ましいのは Fg. ですが、別のフレーズを演奏しているため不可能です。次に望ましいのは BCl. であるが、これも Fg. と同じフレーズを演奏しているため不可能です。その次の候補は Cl. です。休符であるので演奏可能ではありますが、仮に200番4小節目に 5th Hr. のパートを演奏させることになれば、5小節目にかけて12度にも及ぶ跳躍を奏者に求めることになります。残る候補は corA です。休符となっている上、最も美しく鳴り響く音域ではありますが、4声の Hr. の最下音を担当することで音色のブレンドという点で原曲を知る方々にとって違和感なく聴こえるのかどうか、ということだけが気懸りではありますが、唯一の選択肢でありますので、原曲の 5th Hr. は corA に移すことといたしました。

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Act 2 pp.76 練習番号200番

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Act 2 No.26 練習番号200番 Piano Score